メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

空気人形|是枝裕和

初日に観て、感想を頭の中でこねくり回しているうちに、みんなだいすき空中キャンプさん(id:zoot32)がわたしの思っていたこと、うまく言葉に落とせずにいたことをきれいにまとめたエントリーをあげていらっしゃったので、すっかりそれで満足してしまっていた、んだけど、せっかくだから、脱線部分だけでも書いておくことに。

内容についてはほとんど予備知識なしに、ペ・ドゥナのキュートなポスターと、タイトルから想起される「空気人形ってあれだよなあ」という気持ちだけを抱えて劇場に向かった。なので、板尾が出てきたときにも驚いたし、ARATAくんが出てきたときにも驚いた。「空気人形」がタイトルでありながら、あんなに露骨な(爽やかだったりエロティックだったりはするけども、下品でも扇情的でもない)ヌードやベッドシーンが出てくるとさえ思っていなかったから、最初にペ・ドゥナがあっさり脱いでいるのを観たときも、ものすごくびっくりした。今まで是枝監督の作品から、あまりセックスのにおいを感じることがなかったからかと思う。

実はわたしは韓国映画をあまり観ていなくて、ペ・ドゥナが演技しているところも、まともに観るのは多分今回がはじめて。最初から最後まで、まさしく「動くお人形」としてキュートに撮られていて、すっかり彼女のことが大好きになってしまった。「心を持った人形」が口にする言葉のぎこちなさは、日本語を母語としない彼女だからこそ表現できるものだったか。「空気人形」はほとんど「ペ・ドゥナの映画」だったといっていいくらい、彼女の存在感はすばらしかった。ちなみに、今までの印象の何割増かでかわいかったペ・ドゥナのメイクは完全な「ダッチワイフメイク」。日本のリアルドールやグラビアアイドル、セクシーアイドルなんかは、海外のカバーガールと違って、立体感や色味のないお化粧が多い。ちょっとのっぺりしてて、ツヤツヤで、目の周囲の皮膚の薄い辺りに赤みを入れて上気っぽさを出している。あれ、かわいいんだよね。

わたしが是枝監督のフィクション映画が好きなのは、ドキュメンタリーとファンタジーの境界をさまよう不思議な感じが味わえるから。毎回手法も題材も違うけれど、その境界感は、やっぱりどの作品にもあるものだと思う。今回も、設定から筋から基本的にはファンタジーの要素が強いんだけど、やはり「のぞみ」と「シュウイチ(ある意味のぞみ以上にリアリティがない)」のいるファンタジーの世界と、それ以外の登場人物が繰り広げるリアリティあふれる群像劇の世界に切り分けられるように思った。その真ん中、境界にいたのがオダギリジョー演じる人形師と、公園のおじいさん(お母さんを亡くした女の子もかな?)。彼らをつなぎ目に、同じ東京の街が、現実と幻想くるくると色を変える。
特に変な描写をしてるわけじゃないのにやっぱり変な、嘘くさい東京を描いてしまう能力はすごいなあと思う。描き方としては違っても「大真面目に撮った嘘くさい東京」という意味では、ちょっと「トウキョウソナタ」と近い空気があったかもしれない。現実と幻想。この世とあの世。その境界はいつだって魅力的で、だからわたしは是枝監督の映画も黒沢監督の映画も好きなんだなきっと。