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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

アイ・ラブ・ポケッツ

女性ものの洋服には、あまりポケットというものがついていない。多分、ポケットの部分がもたついてシルエットが崩れてしまうからなのだと思う。そして、そのポケットにものを入れられでもしようものなら、せっかくデザイナーが計算したラインがぐだぐだになってしまう。女の人は大体バッグを持ち歩くから、ポケットなしでもそんなに不便な思いをするわけではない、という計算もあるのだろう。
でも、わたしはポケットが大好きだ(声を大にして)。

別に、ハンカチやらボールペンやらあめ玉やらをそこに潜ませたいわけではないのだ。上着やズボンのポケットにお財布をしまっている男の人を見ると、うらやましくは思うけれど、女の凹凸の多い体で、女の財布(なぜかかさばる)を肌身につけることなど所詮むりなので、それはあきらめている。わたしがポケットに入れたいものは、「手」である。

思えば子どもの頃。ポケットに手を入れていると大人たちに叱られた。多分今、わたしがそういう子どもを見かけたとして、注意する。両手をポケットに入れた状態で転ぶことはとても危ないからだ。瞬時に手をつくことができず、顔から思い切り地面に激突する可能性が高くなる。ポケットに手を入れるのは危なっかしくて、礼儀正しくもないスタイルだということは間違いない。

それでもわたしはポケットに手を入れるのが好きだ。冬はとりわけ。生地がなんだろうとすぐに手全体が痒いようなくすぐったいような感じになって我慢できなくて、手袋をつけることが苦手だから、代わりにポケットに両手を突っ込んでしまう。コートやジャケットで、ポケットがあると喜んだら実は飾りポケットで、ほとんどもしくはまったく手が入らなかったときなんか、すごくがっかりする。ジーンズみたいな、手がすっぽり入らないサイズのポケットしかないボトムだと、往生際悪く、その小さなポケットに親指だけ引っ掛けて歩く。

やわらかい生地でラインのきれいな洋服が好きなので、持っているスカートやワンピースのほとんどにポケットはついていない。しかし、最近気づいたのだけど、なぜか某フランスのカジュアルブランドは、ワンピースにポケットをつけるのが好きなようだ。普通つけないだろうというデザインのものにでも、必ず左右に、手首まですっぽり入れてもまだ余裕があるくらいの大きなポケットがついている。おかげでそのお店のワンピースを着ているときのわたしは、ちょっとだらしなく見えるに違いない。心は充足してるんだけどね。

いよいよ冬がやってくる。さあてポケットに手を突っ込む愛好者の皆さん、今年の冬もジャケットやコートのポケットに手を入れて、軽い猫背で街を闊歩しようじゃありませんか。