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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

メトロガール、霧島アートの森へ行く(前編)

よしなし アートとかエンタメとか 旅のはなし

土曜日の午後鹿児島中央駅に着き、まず靴を買いに走った。(※写真はリレーつばめ博多駅です)


9月に、鴻池朋子さんの展示を東京オペラシティで見て、身も心も異界に持っていかれる感覚に、衝動的に鹿児島行きのチケットを取った。標高700メートルの山のなかにある美術館「霧島アートの森」では、東京ではなかった野外展示が行われる。霧島の森の中で見る作品はどんな感じだろうと楽しみにしていると、ちょうどわたしが訪れる予定である11月1日に、作家本人が来館してのイベントが開催されるという情報も入ってきた。鴻池さんと一緒に森を歩き、木の下でおにぎりを食べる「ケモノ道(オオカミロード)ツアー」、なんだかとても面白そう。すぐさま予約を入れた。

しかし、かなり強烈な雨女であるわたしの元に、金曜日、霧島アートの森のスタッフ氏より電話が入る。

「日曜日、天気が荒れそうなんです。雨天中止ですが、少雨なら決行します。足下が落ち葉で滑って危険ですので、歩きやすい靴と長袖、長いズボンで参加してください。あと、カッパかなにか、雨具もお持ちください」

はいはいと返事をして電話を切ったものの、すでに飛行機に乗るまで2時間を切っているわたしの足下は乗馬ブーツ。わたしにとっては「歩きやすい」靴だけれども、どうにもこれではまずそうだ。わたしは、美術館の屋外展示を作家とともに見て回る……といった優雅な散歩をイメージしていたのである。鹿児島中央駅の駅ビルにビルケンシュトックを見つけたわたしは、そこで靴と、防水スプレーを買う。それから天文館の商店街で、簡易雨合羽と、厚手の靴下を買って翌日に備えた。

翌朝6時に起床したわたしは、ホテルの窓から道路を見下ろし、ちらほらと傘が開いているのを目にしてがっかりした。イベントが中止ならば、もう少しゆっくり寝て、遅めの電車で出かけようかと悩んだが、ちょうど雨が止んだので、とりあえずホテルを出る。

7時過ぎ、まだ薄暗い中猫の目は光り、

大久保さんの頭と肩に鳥が止まっている。天文館から鹿児島中央駅まで歩く間、雨が止んだままでいたため、甘っちょろくも「このままもう、降らないんじゃないか」と考えはじめる。雨女のくせに傘を持つのが大嫌いなわたしは、いつもぎりぎりまで傘を買わない。前日に雨合羽を求めたときも、「傘は、実際降り出してからでいいや」と買わずじまいだったのだ。

霧島アートの森もよりの「栗野駅」までは、在来線で90分程度。まずは薩肥線に乗る。窓の外に広がる海、雲に覆われているけれどもその向こうに見えるのは桜島だろう。薄鼠色にけぶる景色は、晴れていたらどれほどきれいだっただろう。小学校の修学旅行の日、そういえば雨だった。校長先生が「松尾芭蕉が『雨には雨の良さがある』と言いました」と話をしたのを覚えているけども、あれ、本当なのかなあ。そんなことを考えているとたれ込めた雲が軽くなり、晴れ間が出てきた。しかし、「隼人」で日豊本線に乗り換え、電車が山深く進むにつれて、再び空模様は怪しくなる。




そして、とうとう。