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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

La Ley de Herodes|Luis Estrada

1999年のメキシコ映画(英語名は「Herod`s Law」)で、2000年のサンダンスでイスパノアメリカ部門での受賞をした作品だとのこと。日本では未公開、DVDも未発売。こういうのは誰かの案内がないと絶対に観ることがないので、嬉しい。田舎の街を舞台にした政治風刺コメディで、テンポ良く映像も素敵でとても楽しかった。事前に当時のメキシコ情勢についても簡単に説明してもらったので、戸惑うことなく物語に入っていくこともできた。

大統領選への出馬を狙う党有力者の命を受け、地方の小さな街の新市長に就任した男。「Mayer」の響き、その後の政治的立身出世に夢を見て浮かれ気分で向かった任務地はなんと、住人が100人にも満たない小さな街(村?)で、過去5年間で3人の首長が反乱により殺されていた。産業もなく、学校は荒れ果てほとんどの住民はスペイン語を話すこともできない。家畜を育てて生計を立てるネイティブ・インディアンたちと、数少ない店といえば、娼館と小さなバーだけ。街の立て直しをはかろうにも、前市長の使い込みにより資産はほんの6ペソしか残されていない。そんななか冒頭(の一瞬だけ)素晴らしい街を作ろうという理想に燃える男だが、ピストルと法律書を手にし、賄賂を受け取った時点から一気に暗黒面へと落ちてゆく。こてこてに狙ったステロタイプの舞台設定やメキシカンミュージックがどことなくのどかで、雪だるま式の転落に笑いが混じるあたりは、コーエン兄弟と近いようなところもちょっとあって、心理描写なんかはぺらぺらなんだけど面白い映画だったと思う。豚がかわいいのもポイントが高かった。

1929年から2000年までメキシコで一党支配の状況にあったPRIの腐敗が描かれている。作中の設定は1949年なんだけども、この映画がヒットした1999年の翌年、総選挙でPRIが大敗を喫しているというので、国内の情勢としてかなりPRIへの批判自体高まっている中で制作されたということなのかも(上映にあたっても、政治的どたばたがあったようだし)。ちなみにPRIに代わって政権を取ったPANという右派政党は、テクノクラートの閣僚を揃えクリーンなイメージでたいへん期待されたものの、ふたを開けてみると以前以上の腐敗ぶりを見せつけ、人々を「まだ昔の方がましだった」と落胆させたらしい。現状ではPANと左派政党PRDが有力政党であり、少しずつPRIも盛り返しているとのこと。こういう話を聞くと、政治なんてどこの国でどの時代でも、たいして変わんないものなのね、と、親近感とむなしさ相半ば。

ところでこの映画の中に出てくるアメリカ人技術者(間男)、テロップで「Alex Cox」と出てきたので「あれってAlex Cox?」「本人?」とどよめきつつその場では確信が持てず(誰もはっきりと顔を覚えていない)もやもやした気分になりましたが、やはり映画監督のAlex Coxだったみたい。彼のファンにも一見の価値有りかも?