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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

カティンの森|アンジェイ・ワイダ

灰とダイヤモンド」のワイダ監督の作品。「カティンの森事件」については学生時代に習った記憶はなく、個人的に関心を持って、ナチスのあれこれを読んでいるうちに行き当たったんだけど、日本語書籍であまり詳しいものに巡りあえずにいたので、フィクションとはいえ当時の状況をかなり克明に描いた映画が公開されたのはとても良かった。原作書籍もあるみたいなので、是非読みたいと思っている。

カティンの森事件というのは、1940年にソ連軍が捕虜にしていたポーランド人将校を大量虐殺し、森の中に埋めたという事件である。間もなくポーランドを占領していたドイツがこの事件を知り、「ソ連軍の蛮行」のプロパガンダのために大規模な現場の掘り起こし、現場検証をおこなった。しかし、第二次世界大戦が終わると、今度はポーランドを支配下に置いたソ連は、「カティンの森事件は、実はナチスによっておこなわれたものである」という一大キャンペーンをはじめ、異を唱えるものを反逆者とする。最終的にポーランド民主化されるまで、この統制は続いたという。ポーランドにとっては、20世紀の被支配の時代を象徴するような事件である。

将校たちは、自分たちの運命に不安を抱きながら、生きて故郷に帰る日を夢見る。カティンの森事件の被害者となった将校たちの妻や娘、母親たちは、無事を祈り帰りを待ちつづけ、彼らの死を知った後は真実を知りたいと願うがそれも叶わない。生き残ったポーランド人兵士はロシア軍に従うことを余儀なくされ、良心の呵責に苦しむ。

様々な立場の人が、様々なかたちで苦しむ、観ていて本当に辛くなる映画だった。何しろ冒頭からして凄かった。橋の向こうとこちらから、大勢のポーランド人がやってきて、橋の真ん中で出会う。一方は、ドイツ軍が侵攻してきた西側から、東へ向かって逃げる人々。もう一方は、東側から侵攻してきたソ連軍から、西へ向かって逃げる人々。その時点で、ポーランドはもはや絶望的な状況にあるのがわかって、やるせない気分になる。

こういう映画や本の感想を書くと、いつも同じような、もやもやっとしたところで終わってしまうんだけど、本当にしんどい。それ以前に目を向けると、ポーランドが他国に攻め込んで併合していた時期なんかもあるから、大陸の国々にとって、この国を取ったり取られたりの歴史っていうのはどうしようもないくらい業の深いものなのかもしれない。そう考えれば国なんてばかばかしいなあと思うんだけど、「地球市民」などという言葉はうさんくさくて、国という枠組みを外せる段階というのはあるにしたって果てしない未来なんだろう。選挙ひとつするのも命がけだったり、内戦で人が大量に死んでいる国も、まだまだあるんだよね。なんだかなあ。