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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

(500)日のサマー|マーク・ウェブ

映画のはなし

ヘッドフォンで音楽を聴きながらエレベーターに乗っていると、隣に立っているキュートな女の子が「わたしもスミス好き」と話しかけてくる。ここで他のどのバンドでもなくスミスを選んでいることにより、この映画はある種の男女にとって特別な「わたしのための物語」になってしまう。逆に言えば、スミスを知っているか知らないかで、この場面の持つ意味どころかこの映画自体の意味すらかわってくるかもしれない。そのくらい、ここでザ・スミスというバンドを選択したことは作品にとって重要だった。ヘッドフォンとスミス、それこそ無防備な心の内側にふっと入ってこられるような一瞬であるに違いなくて、寂しさを抱えてスミスを聴いているような若者はみんなきっと、内心ではそんな出会いを待ち望んでいる。

運命の恋はあるようでないようで、運命的だという思い込みが強ければ強いほど、相手を自分の理想にはめ込もうとする欲望が関係を破綻させていく。少なくともわたしは運命の恋はあると思っているけれど、運命の恋が必ずしも成就するわけではなく、恋に落ちるまでは運命だとしても、その相手にとっても自分が運命の人であるとは限らない。当然せつないけれど、自分が誰かにせつないときに、その誰かが別の誰かにせつなかったりするんだろうなあと思うと、なんだかおかしくもなってくる。トムとサマーの「運命の恋」もそんな風にくるくると、色鮮やかに画面を踊る。

トムの感情がハイになったりローになったりするたびに、急にミュージカルタッチの一場面が挿入されたり、彼を囲む世界が灰色の、無機質な線で描かれたものに変わったり、2画面分割で同時進行する夢と現実の世界など、映像の使い方もとても自由で、楽しい映画だった。ズーイーかわいかったし!