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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

Dr.パルナサスの鏡|テリー・ギリアム

撮影なかばで主演のヒース・レジャーが亡くなってしまい、あやうくお蔵入りになるところだったこの作品。不謹慎だけども、テリー・ギリアムというのも本当にトラブルに愛されている監督で、作品を思ったように撮れなかったり公開できなかったりすることが多い。

けれど、ヒースは大好きなギリアムに、最後に最大のプレゼントを残していった。ドクターパルナサスの不思議な鏡の向こうでは、夢や欲望が具現化する。ヒース演ずるところのトニーがそのを翻弄し、翻弄されるのが見所であるこの作品。鏡のこちらがわの撮影が終ったところでの悲しい知らせに、ヒースの友人たちが手を差し伸べる。そして、鏡の向こうの世界で、ときに他人の理想や欲望により、ときに自らの夢により、トニーはくるくると姿を変えることになる。ジョニー・デップコリン・ファレル、苦肉の策ともいえるこの四人一役が、作品の世界にぴったりとはまっていた。

非常にシンプルでわかりやすくもあり、非常に複雑でむずかしくいくらでも深読みできそうでもある不思議な物語。まるでメフィストフェレスファウストのような、悪魔とパルナサス博士の関係。口が悪くて頼りになる小人パーシー。そしてヒロイン・ヴァルを演じるリリー・コールのまさしく人形のような美しさ。イマジネーション、人間の脳の複雑さ多様さを描き出すかのように雑多でカラフルな画面にはやや疲れもしたけれども、とても楽しい映画だった。楽しい気分で、それでもやっぱり本編最後「ヒースレジャーとその仲間から皆さんへ」というテロップが出た瞬間にはぼろぼろと涙が止まらなくなってしまった。

物語を語りつづける限り、世界は終わらない。この世界がここにあるということは、誰かがどこかで語り続けているということ。「物語」と「イマジネーション」への愛情というのは常にテリー・ギリアムの映画から強く、強く感じられ、わたしはそんな彼の映画を支持したいと思うのです。