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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

FUJI ROCK FESTIVAL 2010(前半)

よしなし 音楽のはなし

5月あたりか、ATOMS FOR PEACEが出演すると知ったときに、苗場行きを決めた。大学を卒業してからは日程や体力の関係もあってすっかりご無沙汰していた夏の野外フェスは、さすがに全日程参加とはいかないので、3日目だけ。気を遣わず一緒にライブを観ることができる数少ない友人は、今年は2日目だけの参加というので、あっさりとひとりで行くことにし、宿泊の確保も面倒なのでオフィシャルバスツアーを申し込む。夜行バスで苗場に行き、丸一日フェスに参加した後でまた夜中に帰京する、というハードながらも効率のいい日程でローコスト。

しかしツアーを申し込んだだけで満足しきって、出演者もろくに確認しないまま出発前日。この時点で「苗場は断続的に雨」との情報が入る。一度降るとなかなか乾かない山の土壌なので、こうなったらスニーカーでの参戦は危険。とりあえず会社帰りにオッシュマンズにて長靴を確保する。当日になって、さらにあわてて、レジャーシートや日焼け止めなどを買いに走った。

23:00に西新宿でバスに乗り込む。何年ぶりだかわからない夜行バスなので、座ったまま眠るのにいい体勢がつかめず朝までずっともぞもぞしていた。6:00くらいに苗場に着き、洗面等すませても開場時間の9:00まではずいぶん時間がある。


暇なのでゲートに並んでみた。初日だと混むのだろうけど、最終日だけあって早くから並ぶ人は少なめ。椅子に座ってうとうとしたり、持ってきた本を読んだりしていると、前方からかすかに音楽が聴こえてくる。グリーンステージでAFPがリハーサルをしているらしい。この規模のフェスで、朝の6時台からわざわざリハ? 普通は出番直前に会場入りするのでは? いぶかしみながら遠くから響く音に耳を澄ました。

開場後、とりあえずグリーンステージの通路後方の芝生に基地を作る。前日の昼以降何も食べていなかったことを思い出しにわかに空腹を感じはじめたので、散歩がてらフィールド・オブ・ヘブンまで食事を買いに行くことに。




ピザとビールでブランチ。途端に睡魔に襲われ、基地に戻って横になる。うとうとしているうちにトップバッターであるアジアンカンフージェネレーションが演奏をはじめていた。曲はあまり知らないし、ずいぶん昔にイベントで何回か観たことある程度だけれど、ボーカルの筋を通した物言いや、独自イベントで積極的にお気に入りの海外バンドを紹介する活動には好感を持っている。海外バンドの影響とジャパニーズポップスのキャッチーさを取り込んだ音には「同じもの食べて育った」同世代ならではの親近感。多分、わたしがフリッパーズギタースパイラルライフを好きになって、そこから海外のバンドに興味を持つようになったように、今アジカンを聴いている若い子たちがナノムゲンフェスティバルに出たバンドをとっかかりとして世界を広げていくんだろうな。それはとてもいいことのように思う。

この日の苗場はときおり日が出たり曇ったり。日が射すととたんに暑くなるけれど、堪えがたいほどではない。むしろ、夕方からの雨の予報が気になる。ステージの合間のBGMで、OASISの"Don`t Get Back in Anger"が流れると、歩く人、座っている人が両腕を挙げてゆらゆらと揺らし、口ずさみはじめる。あの兄弟がいかに愛されてるかに微笑ましさを感じながら、眠ったり、持ってきたガイ・バート「ソフィー」を読んだり。そしてキュートなMATT&KIMを観たり、おっさんにしては男前過ぎるOCEAN COLOR SCINEの安定感ある演奏を楽しんだりしてから、おもむろに基地を後にした。

再びのヘブン。次の演奏はOZOMATLI! ロスアンゼルス出身の多国籍バンドは、民族音楽にロックやヒップホップの要素を自由自在に取り入れて、とにかく踊らせてくれる。ジャムバンドメインのステージだけあって、かつてはPHISHが3日連続出演したこともあったけれど、今年はOZOMATLIが連日の出演+1日の複数ステージ出演など八面六臂の大活躍。同じ時間帯にもう少し奥のオレンジコートに出演するMALLACANというメキシコ系のバンドも非常に気になっていたものの、今回はOZOMATLIで踊ることに。

わくわくしながらセッティングを眺めていると、お客さんが増えてくる。インディアンの双子みたいなコスプレをしたお嬢さんたちなど、観ていて楽しい客層の中一番目立っていたのはこの、ヨーダを背負った彼。すでに彼の写真はTwitterで出回っており「ヨーダを背負っているのではない、ヨーダが本体だ」などと冗談まじりにコメントされていた。外国人のお客さんたちも、この国籍を超えるキャラクターに興味津々で、皆が背後から彼の写真を撮っていた(※しかも彼のシャツはなぜかヴェネチア時代の名波ユニフォーム)。

この日もOZOMATLIは最高で、煽る、歌う、踊る。日本人生まれメンバーのヤマグチさんもごきげんで、少し自信のない日本語にはにかみながらMCをこなす。跳ね踊り狂乱の渦と化した客席にラッパーがダイブし、客の女の子が彼に自分の帽子をかぶせる。ヨーダ氏が頭上に持ち上げたヨーダを振りながら踊っていると、ギタリストがめざとく見つけ、身振り手振りでそれをよこせと言う。かくしてヨーダは空を舞い、フィールド・オブ・ヘヴンのステージに上がることとなる。最後はメンバーがステージを降り、客を引き連れチンドン屋状態で練り歩く。これはフジでOZOMATLIが演奏する際のお決まりのパターンらしいのだけど、本当に本当に楽しかった。頭を使わないで聴く音楽、フィジカルに直接訴える音楽の力と地面を踏んで踊ることの幸せを思いきり噛み締めた。