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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ひとりでホーチミンに行ってみた(1日目)

旅のはなし

この夏は友人と欧州に行く予定だったところが、双方仕事が忙しく頓挫。しかし、まとまった日程も取れないくせに、一度旅行熱に火が点くとなかなか抑えることは難しい。しかも、ひとり海外デビューを果たしたいという欲求までもがふつふつとわき上がり、結局ベトナムホーチミンに行ってきた。


周辺のタイ、カンボジアインドネシアなどと比較しても観光資源に乏しいベトナム。一時期「プチパリ」だとか「雑貨天国」だとかもてはやされたけれど、最近はブームも一息。どうせ東南アジアまで行くならば、アユタヤや、アンコールワットや、ボロブドゥールに惹かれる気持ちはよくわかる。わたしも、もう少し日程が確保できれば、いや、せめて政情不安がなければタイを選んでいたかもしれない。でも、とりあえず今回はホーチミンなのである。実質滞在2日間というスケジュールは物足りない気もするが、ひとり海外のデビュー戦としては不安のない期間でもある。

直前まで仕事やらフジロックやらでばたばたしていたせいで、ろくろく準備も下調べもまま出発当日を迎えた。家を出る予定時刻の一時間少し前に、ようやくのろのろと荷造りをはじめる。手元には、ネットからプリントアウトした興味深い店の地図数枚。あと、WiFIの野良電波が充実しているという噂を信じてのiPhone。文庫本2冊。着替えと、スコールに備えての折りたたみ傘、カメラ。たいした量でもなく、普段から持ち歩いている大きめのエディターズバッグにきれいに収まってくれた。

一昨日に苗場で踊りすぎたせいで。まだ少しふくらはぎが痛い。目が痛くなるような青空の下、足を引きずり成田へ向かう。早く着きすぎてしまったので、お茶を飲み、本を読んで暇をつぶしていると、外国人の操縦士がマグボトルを持ってきては、店員にコーヒーをオーダーしてゆく。学生のグループが楽しそうに写真を撮りあっているのを横目に微笑ましく眺める。
予定時間から10分遅れて航空機に乗り込む。隣のシートに座る男性は、カジュアルな格好はしているが商用なのか、カバンから取り出した設計図をチェックすることに余念がない。わたしは機内誌に軽く目を通してしまうと、機内上映の映画リストとにらめっこを始める。結局「チャーリーとチョコレート工場」を見はじめたのだけど、リモコンの使い方がわからず、画面には最後まで中国語字幕が表示されていた。

 

機内食を食べて、映画を見終えて少し眠る。起きて、持ってきた「キャッチ=22」を読む。その間にも、前方スクリーンに映る地図の上を、飛行機のかたちのマーカーがどんどん南に向かって行く。あっけないくらいにどんどんと。そのうちに飛行機が高度を下げはじめ、陸地が見えてくる。山だろうか、ところどころに明かりが見える。徐々にネオンの数が増え、ごとんと衝撃とともに着陸。現地時刻は22:00過ぎだった。

航空機を出て、入国審査を受ける。いかにも共産圏的な(先入観?)カーキ色の制服を着た係員が無表情にパスポートをチェックし、返してくれる。今まで行った国では大抵、波出国スタンプの近くに入国スタンプを押してくれていたのに、なんとここでは成田で押印を受けたページからはずいぶん離れた、でたらめといっていいくらいの場所にスタンプが押されている。南国のおおらかさ、なのかな?

荷物を預けてもいないわたしはそのまま空港ロビーに出て、とりあえずお手洗いへ。タンソンニャット国際空港はつい昨年に日本からのODA国際線ターミナルを新しくしたそうで、とても近代的で設備も整っているし、清潔。お手洗いから出ると、周囲に両替所があることに気づいた。少し現地通貨を準備しておこうかなと思ったものの、いくらかドルを持っているのでまあいいかと結局は素通りした。

時期的なものもあって、航空券を買うよりもスケルトンツアー(航空券+ホテル+空港とホテルの送迎のみがセットになったもの)の方が安かったので今回は旅行会社のパック旅行を利用した。空港で現地スタッフが出迎えてくれる予定で、このときばかりは見逃されても困るので、ツアー会社から貰っていたタグをカバンの目立つ場所につけた。すると笑顔のさわやかな男性がすぐにわたしを見つけてくれた。「他のお客さんもいるので、向こうで待っていてください」と、日本語は驚くほど流暢だった。




夜だというのにむっと暑い空気の中、花壇のへりに座る。植わっている木を見て、やはりずいぶん南に来てしまったのだと思う。はしゃぎまわる子供を眺めたり、メール確認をしたりしていると、徐々におなじ旅行会社を利用している客が集まってきた。女の子2人組×2と夫婦が1組。ひとり客はわたしだけ。全員が違うホテルに泊まる予定なので、順々に下ろしていくのだという。

車内では、現地での注意事項が伝えられる。両替について、バイクタクシーやシクロは料金でもめることが多いので乗らない方がいいということ。タクシーも、特定の会社以外はおすすめできないこと。オプションツアーを準備しているので申し込めば参加できることなど。話を聞きながら窓の外に釘付けになる。はじめての国に来て一番わくわくするのは、この、空港から街へ向かう間。車線が多く、夜遅いにもかかわらずたくさんのバイクが走っている。台湾ほどスピードを出しはしないけれど(あれはハイウェイだからか)、運転はおだやかとはいえず、何かとクラクションを鳴らす。通り沿いにはたくさんの店が並び、日本や欧米の自動車メーカーや電機メーカーのネオンもちらほら見える。市場経済を導入して何年だっけ、この国は。

ホテルに着くと、一緒に車に乗っていた旅行会社のスタッフがわたしをフロントに連れて行き、明後日迎えに来るから、と言い帰って行く。わたしはカードキーを受け取り、エレベーターに乗る。部屋はごく普通のツインルームで、特に豪華でも新しくもないけれど、それなりにきちんとしていて、アメニティも揃っている。クローゼットと冷蔵庫が広いのは気に入った。日本人観光客の利用が多いのだろう、セキュリティボックスには日本語の説明書がついていた。

何にせよ、夜遅い。ベトナム時間で0時過ぎ、日本だと2時過ぎ。そして、明日はせっかくだから、メコン川下りツアーに行こうと思っている。さっきフロントで貰った、旅行会社あっせんのプランだと50ドル。でも、数少ない事前に仕入れた情報によると、バックパッカーストリートであるファングーラオ通りには国内のバス旅行を多く扱う旅行会社がたくさんあり、そこで申し込めば同じメコン川下りを10ドル程度で楽しめるらしいのだ。ただし、出発は朝8時頃。しかも当日申込みする場合はその1時間くらいまえに店にいくといい、と書いてあったのでのんびりはしていられない。「早起きしなきゃ」、シャワーを浴びて、目覚ましをかけて、冷蔵庫に入っていた333ビールを一本だけ飲んで、とりあえず布団に潜った。まるで外国に来た気がしないなあ、と思いながら。