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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ひとりでホーチミンに行ってみた(2日目の後半)

さて、出発時間も近づきシントラベルの前に戻ってみると、店内にも歩道にもたいへんな人。各国からの旅行者が、自分の参加するツアーの出発は今か今かと待ちわびている。そんな旅行者を狙ってサングラスを売りつけにくる商人もいて、なかなかのカオスだ。決して広いとはいえない路地に次々とバスがやってきて、スタッフが行き先を書いた紙を掲げると、人がどんどん車内に吸い込まれていく。


しばらくすると、わたしの乗る「ミトー・ベントレ行き」のバスがやってきた。同じ行き先で一泊と日帰り、2種類のツアーがあるようで、一泊の客は大型バスに、わたしを含めて日帰りの客は小型バスに案内される。窓際の席に座り、目的地への2時間を本でも読んで過ごそうかと考えていたら、後から乗ってきた青年がわたしの隣のシートを指して、座ってもいいかと聞いてきた。いいよ、と答えると、彼は右手を差し出し自己紹介をした。手を握り、わたしも名乗った。結局このツアー中は彼、アンディと行動をともにすることとなる。物知りで人懐っこい彼の話は面白かったし、彼のお陰でほかのツアー客にもすんなりとけ込めたような気がする。

アンディはロスアンゼルスからやって来た韓国系アメリカ人で、普段はパブリックスクールで英語を教えている。もう30カ国ほどを旅していて、今日はホーチミンに来て4日目。この後、タイと大阪を回ってからアメリカに帰るのだという。英語教師だけあって、ときおりわたしの変な英語をやんわり訂正してくれたり、物の名前や表現を教えてくれるのがありがたい。3年ほど韓国に住んでいたこともあるせいか妙なことに詳しく「日本人は、韓国ドラマが好きなんだよね。どの俳優が人気なの?」と訊ねてきて、わたしが「中年女性が主なファン層かな。ペ・ヨンジュンは人気があったよ」と答えると、「《ヨン様》の《様》って何?」と妙なことを気にするのが面白かった。
バスは都市部を離れ、周囲の景色が変わってくる。水田や放牧地のようなものが目立つ。牛やあひるの群れを何度も観た。犬や雀など、この国にいる動物全般に言えることだけども、痩せている。



しばらくして、トイレ休憩のためサービスエリアに立ち寄った。ここは完全に観光客向け施設で、レストランや土産物屋が併設されている。美しく手入れされた庭園を散歩して、ハンモックで休憩。


再度バスに乗り込み、数十分。目的地に着いた。現地ガイドの説明の後、モーター付きのやや大きな船に乗る。濁った川を進み、途中から小さな支流に入って行く。周囲はうっそうとして、ところどころに民家。ココナッツ栽培がさかんなようで、船に大量のココナッツを積んで作業をしている人も見かける。






しばらくして、島に上陸する。ここで昼食だと言われ、いくつかのグループに分かれてテーブルにつく。わたしのテーブルにはアンディの他に、オーストラリアから来た2組のご夫婦、ドイツから来た男性。自己紹介をして、あとは雑談をしながら楽しく食事をした。乾燥して皮がパリパリになってしまっている生春巻きと、揚げ春巻きやエレファントフィッシュの唐揚げ。あと、魚の煮物や、鍋ものとごはんなど。

ドイツ人男性は、45年間働いて昨年リタイア、今は悠々自適なのだと言い全員からうらやましがられる。オーストラリア人のご主人のうちひとりは、わたしに「日本のどこから来たの?」と訊ねる。東京です、と答えると、「私は2度東京に行ったことがあるんだよ」と嬉しそう。仕事で? と聞き返すと、いや勉強だよ、という返事。「勉強? 何の?」すると彼は嬉しそうに言った。「尺八!」。オーストラリア人の先生について尺八を習っていたが、本格的に勉強するようになって何度か日本にもレッスンに来たのだという。「日本人でも尺八演奏する人って、そんなにいないと思いますよ」とびっくりするわたしに、やたら鼻高々と「オーストラリアには2000人以上の尺八人口があって、ワールドシャクハチフェスティバルだって開かれたんだよ!」。うーん、日本人がラテンやったりするようなものかしら。

食後は小さめの手こぎボートに乗り換える。この辺りの人たちは、観光業で食べている人が多いからか、とても愛想がいい。英語はまったく通じないようで、誰が話しかけても困ったようにはにかむだけだけれど、特に子どもはかわいらしかった。







それからまた上陸。三輪のバイクに荷台をつけて、そこに人を詰め込むという恐ろしくエキサイティングな乗り物で移動する。カーブを曲がるときなんかはものすごく怖いんだけど、皆できゃあきゃあ騒いで楽しかった。その後は、ライスペーパーとココナッツキャンディーの実演販売を見て、ハチミツのお茶と果物をいただいた。ライスペーパーは割ってしまいそうだし、ココナッツキャンディーも時間が経つと油が回ってお土産には適さないと聞いていたので、わたしはどちらも買わなかった。パイナップルやスイカ、ドラゴンフルーツの他にもライチに似た珍しい果物があって、なかなか美味しい。ここでも同じテーブルになったドイツ人氏は、食べ終わった果物の種をティッシュペーパーできれいに拭いて、ラップに包んでポケットにしまいこんで嬉しそう。何をしているのかと思えば、「持って帰って庭に蒔く」。さすがに熱帯果樹はドイツじゃ無理なんじゃ、と言うと、なんと彼は一年の半分をドイツ、残り半分をギリシャで暮らしているのだった。「ピーナッツも芽を出したから、いけるんじゃないかな〜」と言っていたけど、さてどうかな。

ここでも、隣接する民家の子どもがかわいらしい。双子ちゃんは険しい顔をしながらも客のあいだをちょろちょろと歩き回り、最後は名残惜しそうに船に手を振ってくれた。






再び大きめの船の乗り換えて、最後に向かったのがレンガ工場。ほとんど手作業で作られるレンガには4つの空洞があいており、ベトナムの気候に適した建材であるらしい。また、海外にも輸出されていると言っていた。







さて、船は無事出発地に戻り、わたしたちは再度バスに乗り込む。途中簡素なサービスエリア(ここのお手洗いはなかなか見かけないくらい原始的なもので、他のツアー客が「これはトイレじゃない!」と衝撃を受けていた。タイル敷きの小さなスペースの角に排水溝があり、床に直接用を足す。そばにある大きなポリバケツの中に水が入っており、ヒシャクで水を流すといったもの)に立寄り、一泊して帰る人たちとはここでお別れだった。いい人ばかりだったのでちょっと名残惜しい。

帰りは疲れてしまい、熟睡。途中ものすごく道の悪い箇所があって、バスが異常に揺れるので目が覚めた。体がはねるくらいゴトンゴトンと揺れつづけるのにびっくり。

ホーチミンに戻るともう夕方。握手をしてアンディと別れ、気晴らしにホテルまで歩いて帰る。ラッシュアワーと重なったせいで道を渡るのに難儀しながら、道端のお店を覗きながら、のんびりと。ホテルで少し休憩して、疲れたので結局夕食は近くでフォーを食べた。サークルKがあったのでビールを買って帰り、あとはのんびり。とても楽しい日だった。