読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ソフィアの夜明け|カメン・カレフ

ブルガリア映画ってそういえば、観るのははじめてかもしれない。予告編ではあまり興味を惹かれなかったのだけども、評判が良さそうだったので映画館に足を運んだ。

映画そのものは、ドラッグ依存から立ち直ろうとしながら今度はアルコールにすがってしまう木工職人イツォを中心に、ソフィアの街で暮らす若者、ソフィアを通り過ぎていく若者の焦燥や逡巡、閉塞する世界への違和感を描く。ドラッグ、恋愛、家族関係というパーソナルな問題がくすぶる一方で、若者の抱える漠然とした不安が政治的不安にコミットし、移民排斥といった過激な行動につながっている現実を折り込むことにもずいぶん力が入っていた。映画を観ているあいだは、ブルガリアみたいな(先進国とまではいえない)国でも移民問題って大変なのね、と、ここで描かれている問題を、ここ最近西欧諸国でわき起こっている移民排斥と重ねて見ていたけれど、帰宅して調べてみると、ブルガリアとトルコ人の関係というのはまた少し違った、複雑なものであるらしい。

終盤、医師に心のたけをぶつけた後に、イツォは路上で段ボールを運ぶ老人に出会う。この後が素晴らしかった。多分ただのおじいさんなんだけど、まるで預言者みたいなおじいさん。こんな風にごく自然に、こんな風な日常の風景の中で、復活や再生は描けるんだな、起こりうるんだなと。楽しみながらも、頭の中で「王道的若者の懊悩映画」にカテゴライズしつつ鑑賞していた「ソフィアの夜明け」は、この場面で完全に抜けた。映画全体の持つ色が変わった。

ところで、冒頭で、イツォの弟ゲオルギをギャングに引き入れようとする友人が、こんな辛辣なジョークを口にする。「なあ、スタートレックにどうしてアラブ人が出てこないか、知っているか?」「さあ」「未来の話だからさ」。これが、一番印象に残った台詞。