メトロガール

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愛する人|ロドリゴ・ガルシア

パッセンジャーズ』を飛ばしたので、『美しい人』以来のロドリゴ・ガルシア。家族や恋人におけるさまざまな愛や葛藤を描いた短編9本を並べた『美しい人(Nine Lives)』から今回の『愛する人(Mother and Child)』、内容的にはそのまま今回の作品を「the 10th Live」として前の作品に加えてもいいくらいの連続性を感じるので、邦題はやはりそのあたりを意識してつけられたのかもしれない。どちらも良い邦題だとは思わないけど。

女性についての物語を描く監督としては、アルモドバルやオゾンのことをまず思い浮かべる。わたしはこの2人の監督のことは大好きなのだけども、どうしても彼らの描く「女性」について考えるときに、監督が同性愛者であることを頭の中から追い払うことができない。ゲイの男性だからこそ描ける女性像、というものを強く感じてしまうのだ。一方のロドリゴ・ガルシアの描く女性はやはり、異性愛者の男性から見た女性像だと思う。類型的な造形と予定調和のストーリーテリングは正直いってあざとい印象で、『美しい人』の最後の短編(ダコタ・ファニングが出演していた作品)も今回の作品も、はっきりいってオチは陳腐といっていいくらい。それでも『愛する人』がヒューマンドラマとしてきちんと成り立って感情移入できる作品になっているのはやはり、女優達の技量による部分が大きいのかもしれない。

14歳で出産をし、出産当日に娘を養女に出したカレンは、その決断を強いた母親と受け入れた自分のことを許せないまま生きている。出産当日に養女に出されたため実の親を知らず、養親との関係にも恵まれなかったエリザベスは、ひたすら自立だけを追い求め、他人との深い関わりを拒絶して生きている。そして、不妊に悩む女性ルーシーはなんとか子を持とうと、赤ん坊を養子として迎えるため奔走する。

群像劇として進む3人の女性の物語が終盤にかけ絡み合っていく流れは巧み。そして、3人の女性に加え彼女達をかこむ女性達全員の演技がいい。繊細な心の流れを体の奥から表現しているようで、とりわけエリザベスというエキセントリックなキャラクターを演じたナオミ・ワッツについては、こんなに美しい人だったかと改めて驚いてしまうくらい輝いていた。妊婦の腹を作る予算のない映画作りにおいて、撮影期間中に妊娠していなナオミが実際の臨月姿で演技をしていたというのを後日読んで驚くとともに納得した。ちょうどはじめての子を持つ直前だったナオミの、あの時期にしかできない演技だったのかも。女優達が皆自分の役柄を愛し理解し、台本以上にそのパーソナリティーを深いものにしているようで、それだけの共感を女優から引き出せるというのもやはり、ロドリゴ・ガルシアの監督として優れた部分なんだろう。