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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

お茶の間のブロックバスター

週末はたいてい映画館に足を運ぶ。DVDを借りれば数百円。なのに映画館に行きたくなる。わたしには集中力がないので、家でDVDを観ていると、途中で立って飲み物を取りに行ったり、洗濯機がピーと鳴ったら映画を一時停止して洗濯物を干してみたり、落ち着かないのだ。お金を払って、暗闇に自分を閉じ込めて、吸い込まれそうな画面を前にしてようやく映画と向き合える。そのくせたまに、上映中に寝てしまうのだからしょうがない。静かな映画で、画面が暗くて、長回しだったりすると、ついうっかり。実は、映画館でうとうとして、目を覚ますとまだ映画やってる、という気分はとても好きだ。

こんな風に映画と映画館を身近に感じるようになったのは、大人になってからのこと。今でこそ大分のあちこちにシネコンが乱立しているが、わたしが故郷にいた頃は、映画館といえば、中心部のアーケードにひとつふたつあるきりだった。ビルのフロアごとにいくつかスクリーンがあって、大手配給の作品ばかり。地下には「大分シネロマン」だか「大分シネパトス」だか忘れたが、そういう名前のポルノ映画専門館があった。市内の繁華街は一箇所だけなので、自宅からほんの二十分の市街地に出かけることを誰もが「街に行く」と言った(多分、今も言う)。毎週末親に連れられて街に行き、一件しかないデパートにある大食堂でホットケーキを食べて、「シルバニアファミリー」をひとつ買ってもらうのが定例だった。街に行く頻度と比べると映画を観る機会は少なくて、年に数回、多分『大長編ドラえもん』や、当時大人気だった光GENJI主演の映画を観た記憶もある。あの頃、映画といえば二本立てが普通だったっけ。いずれにせよ当時わたしにとって映画館というのは遊園地のような非日常的で、映画といえば、たまに父が近所のレンタルビデオショップで借りてくれるか、もしくは「日曜洋画劇場」のようなテレビ番組で観るのが普通だった。

はじめて友達と洋画を観たときのことを覚えている。中学生の頃で、トム・クルーズニコール・キッドマンの『遙かなる大地へ』という、控えめに言ってもあまり面白くない映画だった。その七年後同じ映画館で『アイズ・ワイド・シャット』を観たのは雨の平日で、客席にはわたしと、床で寝そべる浮浪者がひとり。映画の内容に負けず劣らずスリリングだった。

十代後半さしかかった頃には映画館そのものに抱くスペシャル感は薄れていたが、映画料金の高さはハードルとなり、やはり映画館に通うには至らなかった。大学生時代にレンタルでずいぶんたくさんビデオやDVDを観たのも同じ理由だ。その頃はとかく音楽に夢中だったので、映画に裂くお金があまりなかったというのもある。

仕事に就いてから、映画くらいはある程度自由に観られるようになった。四年前に再び東京で暮らすようになると、シネコンやらミニシアターやら名画座やらが至るところで常時面白そうな映画をかけている環境に、ますます映画館が身近になり生活に溶け込んだ。シネフィルにはほど遠いけれど、ちょっとばかり珍しい映画や小洒落た映画なんかを観るようになって、でも一番映画に深く入り込んでいたのは案外、ブラウン管に映し出されるベタなブロックバスタームービーを、夜の九時から家族みんなで観ていた頃なのかもしれないなと思う。『グーニーズ』も『バック・トゥー・ザ・フューチャー』も『ターミネーター2』も『ネバーエンディングストーリー』も、一度も大画面で観たことないし、お金を払って観たこともない。けど、気づいたらすっかり筋書きを覚えてしまっていて、しかも何度観てもわくわくしてしまう。

大学生の頃、久しぶりに『グーニーズ』が観たくなって、「うちに昔録画したビデオがある」という友人の家に行った。古いVHSをビデオデッキに入れると、画面はざらついていたけれど、ちゃんと映った。映画は懐かしくて面白かった。挟み込まれるCMも昔のものなので、タレントの若さや懐かしい商品の数々もまた話のたねとなり、ずいぶん盛り上がったのを覚えている。

なんでこんなことを思い出したかというと、ちょっとだけ『スーパー8』を観たいと思っているから。これは多分、子どもの頃大作映画にわくわくした、あの気持ち*1で観るべき映画。でも、わたしは一度だってそれらの映画をかしこまって映画館で観たことがないから、やはり『スーパー8』は何年後かに、日曜洋画劇場で、吹き替えで観るべき映画のような気がしてしまうのだ。もっともすっかりテレビから遠ざかったわたしは、この機会を逃したら永遠に13歳のエル・ファニングを見逃してしまいそうな気もしているんだけど。

*1:第九地区』を観たときの感じは強いて言えば近いのかな。でもあのB級感はむしろ、『ザ・フライ』や『バタリアン』を観てるときのそれだなあ。