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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

「ビリケン」

よしなし

古民家みたいな、長屋みたいなギャラリーに入った。三和土の横に小さな受付があって、若い女の人にお金を渡して入場券を受け取る。一階に何が展示されていたかは覚えていない。細長い小さな一部屋が休憩所になっていて、粗大ゴミ置き場から拾ってきたみたいな、てんでばらばらのひとりがけソファ(背もたれにはレースがかけてある)がぎゅうぎゅうに押し込められている。そのうちひとつに座っているうちに、わたしはすっかり眠ってしまった。

目を覚まして、狭くて急な階段をぎしぎしいわせながら二階に上がると、右と左に部屋がある。足を踏み入れた左の部屋には窓がなくて、四畳半くらいの広さ。床に、40〜50センチくらい、赤い水玉のハイヒールを模した草間彌生の立体作品がぽつんと置いてあるけれど、目立つのは部屋の真ん中に置いてある、白いリネンのかかったセミダブルのベッド。作品なのかなんなのかわからないけど、とりあえずもぐりこんで眠る。しばらく経って気づくと、部屋の入り口が閉められていたので、慌てて引き戸を開け一階に下りる。時刻は午後7時半で、8時の閉館まではまだ少し時間がある。駆け込みのお客さんなのか、白いジャケットとソフト帽の老人が2人連れで入って来るのとすれ違う。靴を履きながら、近くに置いてある展覧会のチラシに目をやる。そっか、わたしは浮世絵が観たくて来たのに、展示期間が終わっちゃってたから、今はモダンアートが置いてあったのか。

外に出るとまだ日は沈んでいない。蒸し暑い夏の夕方。そこは狭い路地。下町というか、田舎町の商店街のようなところ。周囲には小さなお店と民家が並ぶ。多くの商店が店じまいをしているが、やかんやほうきやトイレットペーパーを並べた生活雑貨店はまだ営業しているようだ。張り出した軒先テントの黄色が目立つ店で、そのテントには赤い大きな古くさいフォントで「ビリケン」と書かれているから、それが店の名前なんだろう。

という夢を、午前5時に目を覚まして、損をした気分で寝直した少しの隙に見た。