メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ある詩人との会話(詩人と小説家について)

「先生はさ、小説家になろうと思ったこと、ないんですか?」
「ないね」

「じゃあ、詩人になるっていう意識は?」
「あった」

「ふうん。詩人と小説家って、何が違うのかな」
「詩人と小説家って全然違ってさ、小説家は描写しなきゃいけないんだよ。たとえばここにフォークとナイフがあるだろう。小説家はそれだけで書けるんだ。さっき観た映画に犬が出てきたけど、詩人は犬を書くとき、ただ『白い犬』と言ってあとは想像させればいい。でも小説家は姿かたちや背景、いろいろなことを描写する」
「そっか」

「たとえばあの作家、あいつは何でもよく覚えてるんだよ。どうでもいいことを克明に覚えている。そういうところからして、小説家だね。僕は音があると書けないけど、あいつはずっとテレビつけっぱなしで、情報耳に入れながら書くしね」
「じゃあ、詩人になるのと小説家になるのって、それまでの環境や経験、読んできたもので決まると思います? それとも先天的な何か?」

「生まれつきだね。最初から、詩人は詩人で、小説家は小説家だよ

(2017年1月追記)
なお「あの作家」とは、堀江敏幸さんのことです。