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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

テートモダンとダミアン・ハーストのザ・グレート・フラット

旅のはなし アートとかエンタメとか

隣の建物にあるアパートメントのレセプションが9時に開くと聞いていたので、その前に風呂に入るつもりだった。しかし、狭い浴室にも居室にも、どこを探してもドライヤーがない。濡れた髪を振り乱して出かけるわけにもいかないので、ひとまずシャワーは諦めた。前日夕方の機内食以来飲まず食わずでいたおかげでさすがにお腹が空いてきたが、何も食べ物を持っていない。棚を覗いたら、紅茶とコーヒーと、なぜか一枚だけロータスカラメルビスケットがあった。お湯を沸かし、ミルクティーとビスケットでひとまず落ち着ける。


レセプションには若い女性がいた。何事もなく賃貸契約を済ませ、帰り際に、部屋にドライヤーが見当たらないんだけど、と聞いてみる。どうやら言い出さないと貸してくれない仕組みのようで、すぐに事務所の棚から取り出して渡してくれた。ドライヤーをむき出しのままぶら下げて、部屋へ戻ってシャワーを浴びた。身支度をし、10時すぎに部屋を出る。

特段目的はなかったけれど、今日が会期末のダミアン・ハーストを観ようかという気分になってテート・モダンを目指す。ロンドンブリッジで降り、道すがらボロマーケットでホットドッグを買い食い。数日後にドイツに行くのに、なぜこんなところでフランクフルトを食べてしまったのかと後に自問。

晴天の日曜、しかもテムズフェスティバルという催しものをやっているせいもあってか、バンクサイドは異常に混み合っていた。テートモダンのもう一つの企画展はムンク。昨年パリでもムンクの展覧会をやっていた。どうやらわたしにはムンク運があるらしい。


ハーストは、良きにも悪しきにも現代アートを具現化した存在だと改めて実感する。個人的には、BYAではチャップマン兄弟が好きなくらいで、他はよくわからない。ちなみにハーストの作品に感じるもやもやは、この翌日に自然史博物館で観たANIMAL INSIDE OUTという企画展で少しだけ明確化する。ただし、展覧会は大盛況で、ハーストの人気自体は疑いようもない。会場外で上映されていた彼のビデオを観て、彼が意図するものについてはなんとなくわかったけれど、その結果アウトプットされるものがあのフラットなドクロや標本であることについてはいまいちよくわからない。あの平坦さこそが彼の芸術性なのかもしれないけれども。

他の展示を楽しんで、3階のロビーに出ると、エレベーターのあたりに人だかりができ、みんながカメラやスマートフォンを掲げていた。何だろうと目をやると、蝶がいた。ハーストの展示で、あざとくはあるけれど、唯一フラットでないものが蝶の部屋だった。ビニールカーテンで出入り口を仕切った白い部屋。壁には、蛹をたくさん貼り付けていたのだろう、会期末の今日は抜け殻だけがたくさんぶらさがっていた。空調のせいで暖かく湿っぽい部屋をたくさんの蝶が舞い、鮮やかな花をいれた器で蜜を吸う。蝶が舞う部屋には数人のスタッフがいて逃げ出さないよう監視していたが、どうしてか一匹がこんなところまで出てきてしまったらしい。たくましい黒人のガードマンが素手でひらりと蝶をとらえた。喝采。でも多分、蝶にとっては災難。




ちなみにバンクサイドにはオリンピックのマスコットがたくさん設置されていた。円谷映画のモンスターみたい、とさんざん文句を言ってみたものの、実際いくつも目にしているうちに、なんとなく愛嬌を感じるようになる。



疲れたので一度部屋へ戻る。途中、スーパーマーケットで果物と飲み物を買う。部屋で一息いれて、ウエストエンドへ。迷ってばかりなので心配だったが、問題なくハロルド・ピンター劇場へたどり着いた。一度観ておきたかったミュージカル、スパマロットを見るために。