メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

パレード、そして祭りの後

6時過ぎに目を覚ましたものの、テレビを観たり雑用をこなしたりしているうちに出かけるのが遅くなった。ついつい観てしまうリアリティTV。4人の素人らしき男女が集まり、そのうち一人が作ったディナーを食べて採点しあう。どうやら輪番でもてなし&採点しあった結果、最高得点の一名が賞金を得るらしい。言葉がよくわからないので、少しでも理解できそうなチャンネルを探しザッピングするのだけども、ジェイミー・オリバーをたびたび見かけるし、夕方には上沼恵美子みたいなおばさんが食の旅的な帯番組をやっている。ドラマ、クイズ、お笑い、料理番組。ラインナップは今時どこでもそう変わらない。


今回は、今まで訪れていない有名博物館を回ってみようと思っていたため。ナショナルギャラリーに向かう。地下鉄にて向かいの席に幼女。隣のいかつい男性にうさぎのぬいぐるみをけしかける。最初はかたくなに無視する男性だが、幼女と目が合った瞬間にっこりしてハローと応対したのでちょっと安心した。

この日の懸念は、朝のニュースで知った、チームGBとパラリンピックGBの合同パレードだった。2日前にやってきた英国は思った以上にどこもかしこもオリンピック&パラリンピック。昨晩のパラリンピック閉会式を持ってお祭り終了かと思いきや、最後の花火がまだ残っていたというわけだ。午後一時にウエストミンスターを出発し、オリンピック&パラリンピックの主なメダリストを乗せた車両が練り歩く。日本でも、銀座のメダリストパレードに驚くほどの観客が殺到していたけれど、なんせこちらは開催国。さらに多くの人々が詰めかけることは想像に難くない。

この日訪れる予定にしていたナショナルギャラリーは、パレードのコースかつパブリックビューイングが行われるトラファルガースクエアに面している。選手達の通過に出くわさなければ大丈夫だろうと高をくくっていたけれど、トラファルガースクエアに向かうにつれて少しずつ人が増えてくる。ちょうどパブリックビューイングの会場設営が行われており、イベントスタッフらしき人々が信号停車中の観光バス乗客に国旗を差し出すなど、徐々に雰囲気は盛り上がりつつあった。

ナショナルギャラリー内も、少し雰囲気がおかしい。紫色の揃いのユニフォームを着たボランティアスタッフ(?)やその他、パレードを見に来たとおぼしき人々がベンチで休んだり、トイレを借りに出入りしたりしている。そうか、そういう使い方もあるのか、と思いながら展示室へ。

さすがに広い。そして迷宮のように次から次へ部屋が連なっている。これだけあると圧巻だけど、一点一点吟味する余裕もない。時折立ち止まりながら、足早に見て歩く。ゴッホセザンヌの部屋では子どもたちが課外授業中。平日に美術館へいくと、大抵子ども向けにこういう授業をやっているわけだけど、先生が絵について何か質問すると、真面目なことから馬鹿みたいな発想まで、恐れずやかましく答えること答えること。見ていて楽しくなる。

大量の絵に圧倒されて、やや疲れて外に出た瞬間、目を疑った。やってきたときとは桁違いの人がいた。パブリックビューイングのエリアでは盛り上がって、歌ったり声を上げている集団がいる。路上も人であふれかえっており、選手団を応援している人から観光客、マスコミ、どさくさに紛れて怪しげなチラシを配るお姉さん、交通整理の警官や万が一に備えての救急隊など入り乱れている。すぐに立ち去るつもりだったけれど、その盛り上がりが興味深くて、ふらふらと歩き回っているうちにパレードがはじまった。飛び交うヘリコプター。周囲のビルの人々も誰一人仕事せず、窓やバルコニーから外を眺めている。

人混みを眺めながら、カバンに入れていたサンドウィッチとリンゴを食べた。まさかのパレード見物。こういったイベントを生で見ることは、おそらくもう二度とないだろう。偶然出くわしでもしなければ、普段から人混みを嫌う自分があえてこんな場所に来ること、たとえ自国でも、多分ない。

ずっと英国を見ていたわけではないので、実際オリンピックとパラリンピックの扱いがどの程度同じで、どの程度違っていたのかはわからない。しかし、たった2日間、少しだけ近寄って眺めて、パラリンピックへの向き合い方には好感を持った。オリンピックとパラリンピックのメダリストのパレードを同時にやるというのはとても素敵なこと。

この日の夕方、近所で国旗をまとった若者グループを見た。ちょっと疲れた、燃え尽きたような感じで歩いていた。テレビのお祭りムードも、この日がほぼ最後。至る所で観光客が記念写真を撮っていたウェンロックマンデビルの等身大人形も、数日後にはまったく見かけなくなった。一度も身近でオリンピックを感じたことのないわたしは、この異国の地ではじめて「お祭りってこうやって終わるんだな」ということを肌で感じた。