メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ジョナサン・サフランフォアそしてリチャード・パワーズ

囚人のジレンマ

囚人のジレンマ

エブリシング・イズ・イルミネイテッド

エブリシング・イズ・イルミネイテッド

先日の旅行中にようやく、ジョナサン・サフランフォアの『エヴリシング・イズ・イルミネイテッド』を読み終えて、そのときふっと頭に浮かんだのはリチャード・パワーズのことだった。

わたしたちは一体どのようにして残酷な過去と向き合うか、どのように過去の自分を、世界を救い、生き延びる術を見つけるのか。『エヴリシング・イズ・イルミネイテッド』とパワーズの『囚人のジレンマ』はよく似たアプローチで過去に立ち向かう。サフランフォアはおそらく、また別のアプローチで、もしくはこのやり方をもっと深めて、9.11に対峙したのだろう(なぜ「おそらく」かと言うと、わたしはまだ、『ものすごくうるさくて、あるえないほど近い』を読んでいないから)。

パワーズは多分すごく評価されていて、人気があって、連休中に『エコー・メイカー』を買いに行ったら本屋にはもう2冊しか残っていなかった。パワーズの何がすごいのかって、実はよくわからない。まだたったの2作品しか読んでいないわたしは、理論武装もかっちりかためたディテールも実はどうでもよくて、その奥にあるのはすごく単純な、言葉もいらないような、一瞬で心臓わしづかみにしちゃうような叙情性で、そこに一番の魅力を感じているのだと思う。

うんざりするくらい何度も書いているけれど、わたしは『囚人のジレンマ*1の、雨あがりのミミズの話が大好きで、それ以上に、最後の「教えてよ父さん、僕らはどこまで自由なのさ」という台詞がとても好きだ。その章は「1979年」という名前で、偶然にもわたしが産まれた年で、あれで全部救われたから。全部救われて、持っていかれて、空っぽになって、しばらくわたしは空っぽのまま呆然と日々を過ごしたから。最後に読んだのは何年も前で、もう細かいストーリーなんてすっかりさっぱり忘れちゃったのに、全部救われた気持ちだけは、まるでたった今読み終えたばかりであるかのように、生々しく、痛々しく、残っている。そういえばここ最近、読書でああいう体験をしていない。

わたしは今日、『エコー・メイカー』を読みはじめた。

*1:囚人のジレンマ』読了時の感想はこちら。http://d.hatena.ne.jp/asx/20080702