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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

グレープフルーツちょうだい

よしなし

思えば子どもの頃は、グレープフルーツといえば実が白いものしかなかった。毎朝半分に切ったものが朝食のテーブルにセットされていて、たまにお砂糖なんかがかかっていて、縁がぎざぎざの専用スプーンで実をほじりながら食べたんだった。甘さより酸っぱさと苦みばかりが舌を刺し、朝が来るくるたび食卓にあの姿を見つけうんざりしていたけれど、健康に良いからと母はグレープフルーツを出すことを止めなかった。

最初に「ルビー」と呼ばれるグレープフルーツを見たのはいつだったか。多分、果実より先に、ジュースで知った。ミニッツメイドの赤いグレープフルーツジュース。こんな色のグレープフルーツがあるのだと驚き、その甘さに驚いた。今ではスーパーマーケットに行くと、グレープフルーツの棚ではホワイトよりルビーの方が広い場所を占めているくらいだ。わたしはたいていルビーを買うけど、強い苦みが懐かしくて白いグレープフルーツを買うこともたまにある。

一人暮らしをはじめて、あのぎざぎざしたスプーンを持っていないので、グレープフルーツの食べ方が変わった。ナイフで切れ目を入れた皮を一気に剥いてしまい、果実だけを一口大に切って、フォークで食べる。正しいグレープフルーツの食べ方は知らないけど、汁が跳ね返るのをこらえながらスプーンで果実を掘るよりずっと食べやすい。でも、小さく切った果実をフォークで食べていると、グレープフルーツを食べている気がしないのもまた事実で、何か別の柑橘類を食べているような気がする、わたしにとっては今もグレープフルーツとは、白っぽい果実で、酸っぱくて苦くて、スプーンで食べるものなのかもしれない。

そういえば、昔はどこの家にもグレープフルーツ用スプーンと並んで「イチゴ用スプーン」があったような気がする。イチゴは、牛乳に入れて、スプーンで潰して食べるものだった。あの、そこが平べったくて、イチゴの種を模した凹凸のついたスプーンも、近年すっかり見かけなくなった。