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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

二度目のパリは夜明け前

よしなし 旅のはなし

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二度目のパリは出張だった。

夕方に着いて、パリなんて飽き飽きしているはずの上司がやたらシャンゼリゼに行きたがるから妙だと思ったら、パリサンジェルマンのショップで息子さんたちにレプリカユニフォームを買いたいのだという。「人気のある順に、3枚」と言うと店員は笑って、イブラヒモヴィッチチアゴ・シウバダビド・ルイスの名前の入ったユニフォームを取った。

会食、会議。会食、会議。そして帰る。自由時間なんて本来まるでないのに、どうしても少しだけでも一人で歩きたくて、もう日の出の遅いパリの街を、夜明け前から歩いた。暗闇が少し怖いから、貴重品をあちこちに分けて持って、橋を渡り、歩いた。

夜明け前の街。動き始める人。観察して、開いたばかりのパン屋に寄って。他の国の小洒落た支店に寄ったこともあるけれど、丸メガネの老女に「マダム」と呼びかけられながら買うパンは、やっぱりちょっと違う気がする。

帰りのCDGで、上司に、毎朝暗闇の中数時間も散歩していたことを告白した。

「お金とカード、細かく分けて。でも、もし全部盗られたら、課長にお金借りて帰ろうって思ってました」

仕事はつつがなく、食事も美味しく、ちょっとだけギャラリー・ラファイエットにも寄ってご機嫌だった上司は、そのときだけちょっと渋い顔をした。

「本当は、そんな危ないことして欲しくはないんだけどね」

それでもわたしは、街を歩かずにはいられない。