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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ロンドンでマーティン・フリーマンを観た

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そういえば、7月にモンティ・パイソンを観にロンドンに行ったときに、トラファルガー・スタジオでやっていた、マーティン・フリーマン主演の「リチャード3世」を観てきた。割と直前になってチケットを取ったおかげ(?)で、安い席は売り切れており、近すぎて嫌だなと思いつつ残っていた最前列のチケットを押さえて数日後、チケット販売会社からメールが届いた。てっきりステージプラン変更で席を移動させられるのだと思って開いてみると、奇妙な知らせだった。

お客様の座席は「血しぶき席(Splash Seat)」となっております。血糊が飛び散る可能性がありますのでご注意ください。

シェイクスピアの「リチャード3世」は血で血を洗う権謀術数的芝居なので、血糊が飛ぶこと自体は理解できるものの、どう注意すれば良いのかはわからない。当日はとりあえず、汚れても後悔しない洋服を着て出かけた。

ドラマ「シャーロック」や映画「ホビット」3部作に続き、「ファーゴ」で米ドラマにも本格進出し、押しも押されぬ人気(多分)のマーティン・フリーマン。わたしが彼を最初に認識したのはコメディドラマ「ジ・オフィス」で、剥き卵のような形良い頭部に一目惚れして、以来彼の出演作をゆるゆると追っている。主としてテレビで活躍する彼が舞台に立つことで普段と異なる客層が劇場に出向くこととなったため、そのマナーが批判されたり、逆に劇場へ新しい客が来るのは良いことだと擁護されたり、まあその程度には騒ぎになっているようだった。連日満席だったしね。

土曜日マチネーで出かけた劇場はすり鉢型で、鉢の底が舞台。段差はなく、最前の席はすり鉢の底=舞台と同じ高さにあるので、役者が近い。例えば下北沢の小さなライブハウスでライブを観るのと比べても近いくらい。想像していなかった近さに正直狼狽したけれど、照明が落ちればそんなことも忘れた。

目の前数十センチで動き、笑い、叫ぶマーティン。という非日常。多分。でも、「暑そうだな(せむしの扮装で、首から背中に掛けて分厚い詰め物をした上に、軍服)」とか「やっぱり頭部が可愛い」とか、ときどき頭をよぎりながらも、特定のキャスト目当てで行った割には普通に舞台を楽しんでいたと思う。共演者にいい感じの役者さんがたくさんいたのもよかった(特に、ヘイスティングス卿を演じたForbes Massonのことはとても気に入った)。

第1次世界大戦中に舞台を移しての「リチャード3世」は音や光の使い方が凝っていて、多分にコミカルで、絶賛するほど素晴らしくはないけども十分面白い舞台だった。大好きなマーガレットの呪詛を堪能、舞台を近代に移している故に必然性は薄かったけれども、ちゃんとリチャードも「A horse, a horse, my kingdom for a horse!」を(やや小さな声で)言ってくれたので、なんとなく「リチャード3世」観劇のノルマも果たした感あり。

ちなみに「血しぶき席」の観客には、血を避けるためにスタジオのスウェットが貸し出された(というか座席に置いてあった)。事前にスタッフから「血しぶきはインターミッションの後、一度だけですからね」とまで言われていたのに、結局は思わぬタイミングで血のりが飛んできたため防御できず、少し手足にかかった。なんてどんくさい、わたし!

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見終えてすぐに、ダッシュでO2へモンティ・パイソンを観に向かった。

後にわたしの観たマチネーを、サー・イアン・マッケランも観に来ていたと知り、ひと目でも生マッケランを観られなかったことを悔やむも、「イアン・マッケランと同じ空間にて、至近でマーティン・フリーマンを観たあとで、モンティ・パイソンの公演に行く」という一日は、死ぬ前になって「あの日があなたの人生のハイライトだったんだよ」と言われてもわたしは驚かないかもしれない。