メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

The Hobbit 決戦のゆくえ|ピーター・ジャクソン


The Hobbit: The Battle of the Five Armies Official ...

トリロジーでは真ん中の作品が一番自由に作れるから一番面白い」と書いたことがある。例えば「ロード・オブ・ザ・リングLotR)」では「二つの塔」が一番好きだし、ノーラン・バットマンではもちろん「ダークナイト」がよくできている。なので、ホビット3部作で最終作である本作が一番面白かったのは、意外。五軍の戦いは、原作では(個人的に)あまり盛り上がらず、スマウグ退治のおまけ気分で読んでいたのだけど、映像となるとやはり、大軍がうわーっと派手にやりあうスペクタクルには強烈な魅力がある。

LotRほど長くもなく、どこか牧歌的な子ども向けの物語であるThe HobbitをLotRと同じ分量で「ハリウッド映画」にするために工夫が必要だったこの3部作は、上記2作品とは少し事情が違うのかもしれない。LotRの追補からネタを取ったり、オリジナルキャラクターを投入したり、非常にがんばっていたとはいえ、第2作のドワーフの川下りにしろ、第3作の戦闘シーン(特に一対一部分)にしろ、冗長に感じる部分はところどころあった。でも全体としての満足度は高く、このクオリティでビルボの冒険を観ることができたのはピージャク監督様様です。

さて、以下内容に触れるので畳みます。しかも特に整理していない徒然なるままの雑感長文です。

 (以下内容に触れるので、閲覧注意願います)

第3作にスマウグ退治の山場を残したのは、結果的に良かったと思う

第2作が、スマウグがレイクタウンを襲いに行くのを絶望たっぷりに眺めつつendとなったことには少し不満があった。引きを作ったまま1年も待つのやだーという気持ち。実際、原作を知らず前2作も知らないまま観に来てしまった不幸な人(いるのかな?)は、冒頭いきなり竜が街を襲い始めてなんじゃこりゃ、と驚いたかもしれない。けれど、スマウグ退治は引き伸ばさずいい具合に片付けてくれて、しかもスマウグを倒したところでタイトルがばーんと出てくるのは素敵だと思ったし、冒頭からいきなり財宝分配で揉め始めるよりは明らかに優れた構成なので、やはり製作側はちゃんと考えているのだなと自分の浅はかさを反省。

気づけば「マーティン以外にビルボ(中年期)はいない!」という気持ちになっていた

当初は若干の違和感があったマーティン・フリーマンのビルボ・バギンスだけれど、さすがにこれだけ観ていると馴染む。顔芸とコミカルな身のこなしや喋り方、いつものマーティンでありながら、陽気なホビットらしくも思えてきて最終的にはとてもしっくりはまってくれた。そういえば、並べてみるとなんとなくサー・イアン・ホルムと似ているような気もしてくる。血縁設定の割にフロド様とは全然似ていないが。

戦うガラドリエル様が見られるのは「The Hobbit 決戦のゆくえ」だけ!

竜退治に心を奪われすっかりガンダルフの存在を忘れていたため、鳥かごに入って揺れているぼろぼろの魔法使いが出てきた瞬間「!?」となった。そうだ、捕らわれていたのだった。ここで、ネクロマンサー(サウロン)にいじめられるガンダルフを救いに、ガラドリエル様、エルロンド、サルマン、ラダガストと、エルフと魔法使い豪華メンバーが次々現れるのは圧巻。しかも戦う。戦うエルロンドはLotRでもちょっとだけ出てきたけれども、ガチで戦うガラドリエル様が見られるのは、しかも鼻血を流す魔法使い(灰色)を軽々とお姫様抱っこするたくましいガラドリエル様が見られるのはここだけ! まだまともさの残っていたサルマンもさすが白の魔法使いと言いたくなる強さで素敵でした。

レゴラスのパパは馬でなくヘラジカを乗りこなす

食料も足りず死を待つばかり、なレイクタウンの難民たちのもとに大量の救援物資を持った森のエルフが到着! 助けに来てくれたのかと思いきや、救援物資はついでで山の財宝を取り返しに来たのだという、相変わらずエルフらしからぬ俗物的なレゴラスのパパ。その登場シーンで驚いたのが、なぜか彼だけ馬ではなく立派なツノのヘラジカに乗っていたこと(原作でもヘラジカでしたっけ……?)。ヘラジカに騎乗しての戦闘シーンは前代未聞なので非常に楽しかったし、ヘラジカの角で大量のオークをすくい上げて一気に首をはねるという笑いどころもとい見せ場も面白かった。そんな俗物パパなので、そりゃレゴラスも反抗期になるさ、と思いましたが最後はかっこいい場面もあってめでたしめでたし。

オリジナルキャラクター、準オリジナルキャラクターたち

女エルフ、タウリエルは、元気な頃のアルウェンのような雰囲気で、「ピーター・ジャクソンのイメージする女エルフってこれか」と再認識させられたオリジナルキャラクター。児童小説をハリウッド・ブロックバスター仕様にするためには恋愛要素は不可欠で、当然小さい髭もじゃおっさんまみれの『ホビット』にそのような要素は皆無だったため、とりあえず若いドワーフをイケメンにして、エルフとのロミジュリ的恋愛を組み入れ、そこにレゴラスを絡ませれば女性人気も問題無し! と製作陣が踏んだかどうかはわからないけども、まあそんな感じなんだろう。(原作では出てこない)レゴラスを出す理由付けにもなったし、悪くないと思う。彼女があの後どうなったのかはわからないけど、薄幸の空気がしみじみ漂っているのはちょっとかわいそう。そして、尽くして尽くして結局タウリエルに一顧だにされなかった哀れなレゴラスLotRよりフレッシュさは足りないし性格も曲がっているし、本当に若かったのか怪しいレゴラス。彼はこの失恋により女性に失望して、LotRドワーフのおっさんと真の友情を育んだ果てに仲良く西方に赴くに至ったのではないかと思えて仕方ない。

特筆すべきオリジナルキャラクターとしてはレイクタウンの統領の腰巾着アルフレドもいる。LotRでサルマンに媚を売っていたワームタングにローワン・アトキンソンの顔をくっつけた(似てる)ような卑怯な小物で、シリアスに傾きがちな「決戦のゆくえ」の雰囲気をところどころで軽くするピエロとして効いていた。アルフレドとトロルは、戦場の癒し。

その他、相変わらずチャーミングな茶の魔法使いラダガストは、ガンダルフ救助でちょっと出てきただけでおしまいかと思いきや、「五軍」の最後の一軍「動物たち」を率いて華麗に一瞬再登場。動物軍登場時に戦場で吠える大熊がやはり一瞬だけ映るけど、あれはきっとビヨルン。Extended Editionでは動物軍の奮闘が追加されたら嬉しいのだけども、どうだろう。

悪に魅入られた者は必ずツケを払わなければならない

龍の黄金にしろ、サウロンの力にしろ、指輪の魔力にしろ、本人が望む望まざるに関わらず、魅入られ惑わされたものは例え正気に戻ろうとも代償を支払わなければいけないのがミドルアースなのだな、としみじみ感じた。トーリン、ゴラム、ボロミア、ボロミアの父、サルマン、セオデン王。指輪の魔力に強いと言われるホビット3人は死なずにすんだけれど、西方って果てしなくあの世っぽいしね。このあたりは宗教的な素地が影響しているのかな。

そしてやっぱり、また「LotR」を観返したくなる!

サルマンが単独でのサウロン討伐を申し出たときの危険な空気。恋に破れたレゴラスに、レゴラスパパが「『ストライダー』と呼ばれる男に会いに行け」と言う場面、ガンダルフとの別れ際に指輪に言及され、思わずビルボが「なくした」と嘘をつく場面。そして、「あの」エンディング。どうしたって「ロード・オブ・ザ・リング」をまた観たくなってしまう。ホビットは1、2作目についてもまだExtended Editionを観ずに我慢しているので、追加場面含めまだまだ楽しめそうなのが嬉しいところ。