読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

甘いものの話、もうひとつ

よしなし 旅のはなし

甘いものの話をもうひとつ。

スイスに行く機会があった。湖のほとりにあるあの街。あわただしい滞在で、いかにもな名物料理を食べられたのはたったの一度だった。そもそもスイス名物ってチーズフォンデュくらいしか知らないのだけど。そのチーズフォンデュも、ああそうだねチーズフォンデュだね、ワイン強めだね、パン大盛りだね、という程度で、楽しかったけれども、びっくりするようなものではなかった。

わたしが小学生くらいの頃にチーズフォンデュブームみたいなものがあった。あのときフォンデュセットを買って、付属の固形燃料を使い果たすとともに物置にしまい込んだ家庭は多かったのでは。チーズフォンデュという料理を知らずスイスに行って、はじめて見て食べたのだったら、きっとすごく感動したんだろうな。

と、チーズフォンデュはともかくとして、この店でひとつ大きな驚きがあった。食後にデザートとコーヒーでも頼もうという話になったときに、「名物だから、頼みますね」と現地スタッフの方が頼んでくれた「メレンゲ・ウィズ・ダブルクリーム」。その破壊力はすさまじく、その他のデザート、例えばピスタチオアイスの豪快さ、レモンケーキの酸っぱさ、プロフィットロールの巨大さは霞んでしまった。

IMG_1514

ヨーロッパでスーパーマーケットに行くと、決まってお菓子売り場に巨大なメレンゲが売っているのを不思議に思っていた。カルメ焼きみたいな感じで、そのまま食べるのかな? と思っていた。そうか、こうするのか。メレンゲは大人の男性の握りこぶし大。もちろんそれだけで甘い。白砂糖の甘さ(だって、卵白に砂糖を混ぜて焼いただけだもの)。「ダブルクリーム」とは生クリームとマスカルポーネをホイップしたもの。ただでさえ甘いメレンゲに、この甘く濃いクリームをたっぷり載せて食べるのが「メレンゲ・ウィズ・ダブルクリーム」。

せっかくだから、一口食べてみようかな。わたしはメレンゲをひとかけら分割って、クリームをのせて口に運んだ。そして言葉を失う。

脳天がしびれる甘さというのはこういうことをいうんだろう。がつんと舌がしびれ、あとは脂肪の濃厚さが喉をべっとりと覆う。血糖値が一気に跳ね上がった(※気のせい)。確かに美味しい。特に「ダブルクリーム」は、マスカルポーネ好きにはたまらない美味しさ。でも、決して次の一口を口に運ぶことはできない。とにかく甘い。命の危険を感じるくらい甘い。周囲の人間も同じ感想を口々に、ひとかけらずつメレンゲを取り、皿を回す。

恐ろしいのが、すべてのメレンゲを食べきったあとも、器にはダブルクリームが半分ほども残っていたこと。残すのが普通なのか、もっと山のようにのせて食べるのが普通だったのか。貧乏性のわたしは「多分おいしいよー」と後輩のエスプレッソにクリームを入れようとし、嫌がられたのも今では良い思い出。