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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

Dina Fried『FICTITIOUS DISHES』、憧れのあの味そしてあの「奇妙な味」も

 「あの小説」の「あの食卓」が実際に目の前に現れるとすれば? という本を読んだ。

Fictitious Dishes

Fictitious Dishes

 

 

ひと皿の小説案内 主人公たちが食べた50の食事

ひと皿の小説案内 主人公たちが食べた50の食事

 

 こちらのサイトの書籍化っぽいです。50の小説から食事の場面を切り抜き、「引用」「その作品or作家or料理に関する豆知識」「食卓を再現した写真」を並べていく一冊。子どもの頃から海外の児童小説の、よくわからないけどおいしそうな食べ物に惹かれ、食い意地たっぷりに本を読んできたわたしのような人間には見逃せない。

再現写真の美しい、小説好きと料理好きの双方に訴えるオシャレなビジュアル本。そう思いつつ読み始めたところ、この本ちょっと変。

『白鯨』のクラムチャウダー、おいしそう。『路上』のアップルパイ、よだれがこみ上げる。そんな風に読み始めると、『秘密の花園』で突如蒸しただけのジャガイモが現れる。これって料理なのかな……と思いつつ読み進めると『ロビンソン・クルーソー』でとうとう「自生していたメロンとブドウ」の写真が現れる。そしてとうとう『百年の孤独』の文字が見え、ここはバナナか? と思ったところ、そこには「レベーカ」という一族の養女になった少女の名前が。彼女、「土と漆喰」を食べる奇妙な癖があるのだ。「食卓を再現した写真」として散らばる「土とそれに紛れた何か(たぶん漆喰とか)」を目にしてわたしは「この本ちょっと変」と思った。

ハイライトはカフカ『変身』のメニュー。ネタバレになるので書くのは控えるが、小説を読まれた方は想像できるであろう「アレ」が妙に小洒落たスタイリングで写真に収まる。果たしてこれは食べ物なのか。オシャレ風味なビジュアルブックでこれはありなのか。「この本ちょっと変」という印象を「この本狂ってる」に修正して、わたしは頭を抱える。

憧れの味と奇妙な味(最後の方には、「赤い錠剤」なんてものまで現れる)を混在させた、オシャレなようで、狂った本。でもまあ、これくらい「奇妙な味」が混ざっているほうが面白いには決まっている。