メトロガール

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思い出のための凡作コメディ『Absolutely Anything』(ネタバレあり)

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英国で8月14日に封切られた映画『Absolutely Anything』を観た。

Monty Pythonテリー・ジョーンズが共同脚本&監督、主演がサイモン・ペグのSFコメディで、脇にはエディ・イザード、声優としてパイソンズの存命メンバー全員+故ロビン・ウィリアムズ出演、と、わたしにとっては好物の詰め合わせ、見に行かない理由のない作品だった。

公開日に「さて観に行くか」と上映館を検索したところ思いの外少ない。ロンドン中心部ではLescester SquareのEmpireしかない。しかも、webで席を予約しようとしたところ、4列しかない、収容人数が100人にも満たないスクリーンである。もう少し大規模な封切りを予想していただけに意表をつかれたが、ともかく曇天の下劇場へ向かう。

ロビーには、大きな作品のパネルと、犬。映画内でサイモン・ペグ演じる主人公ニールの相棒犬デニス(声:ロビン・ウィリアムズ)を演じたMojoくんである。トレーナー氏と一緒にPRのためこの日は劇場に詰めており、訪れた観客と写真撮影に応じていた。

さて作品。特にネタバレを気にする類の作品ではないと思いますが、一応以下畳みます。

日本では9月に下町コメディ映画祭で上映される予定とのことで、「あらすじが興味深い」として以下のサイトで取り上げられていた。

そこでは、とあるTweetを引用して

 地球滅亡を企むエイリアンが銀河法でどんな星も一度は存亡のチャンスを与えるべきと定められている為、超適当に地球人をひとり選んで全知全能の力を与えるけどその男はその力を愛犬とお喋りにしか使わなくて……

と紹介されているが、実際の映画の内容は、わたしの見る限りそのようなものではなかった。前段は正しいのだが「全知全能の力を愛犬のお喋りにしか使わない」などといったことはまったくなく、願いを口にして右手を振っただけですべてが叶う能力を手に入れたニールは、およそ凡人が考えつく卑小な願いを片っ端から試す。

「こぼしたウイスキーを元どおりにしたい」「犬のフンに、自力でトイレに行って流れて欲しい」「いつも自分をこけにする上司にほめられたい」「自分(そして親友)の恋愛を叶えたい」「アメリカ大統領になりたい」「マッチョになりたい」「性器を大きく/形良く/薄い色にしたい」。もちろん後先考えない願いはときに予想外の惨憺たる結果を引き起こし、ニールはその度「今のなし」と取り消す羽目になる。

「万能の力を手に入れたダメ男」が、能力ゆえに喜劇と騒動を巻き起こすというのが本作の筋書きであり、要するに、同様のプロットからこれまでに描かれたコメディ作品や、我々が想像するであろうストーリーから一切逸脱することはない。「せっかくの能力を犬との友好にしか使わない男のゆるゆる癒しコメディ」どころか「手垢の付きまくった王道ドタバタコメディ」という表現の方が正しいと思う。また宇宙船や宇宙人の描写は、近年のSF映画レベルからはるか遠い「ドクター・フー」レベルのチープさ(エンドロールを見る限り、アニメとCGは中国に外注していたのかな?)。

モンティ・パイソン映画ではあれだけキレまくっていたテリー・ジョーンズだが、パイソンズ後にメガホンを撮った映画は軒並みパッとしなかったし、本作もパッとしない(本国でもこの公開規模であること自体は、頷ける内容)。同じサイモン・ペグ主演のコメディならば、エドガー・ライトのスリー・フレーバー・コルネット三部作の方が百万倍面白い。なので、みなさんあまりハードルを上げずに観に行って欲しいというのが正直な感想だった。

とはいえ、あとどれだけ活動できるかわからない高齢のモンティ・パイソンが声だけとはいえ元気に(死んでいるグレアム以外)勢揃いしている。相変わらずハイテンションで怒り狂うジョン、顔芸だけでなく声の出演でも過剰な演技を見せるテリー・ギリアムなどは、それだけで嬉しくなる。もちろん、オヤジモードなエディ・イザードも素敵だし、ロビン・ウィリアムズの最後の演技(犬の声だけど)にもしみじみさせられ、それらを考え合わせるとこれは「過ぎ去ったものや過ぎゆくものへのノスタルジー」で楽しむ映画なのかもしれない。

ちなみにエンドロールの途中にロビン・ウィリアムズのアテレコ風景がちょっとだけ挿入されているので、彼のファンは席を立たないように。

※補足:2016年、邦題『ミラクル・ニール』にて公開。