メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

「FOOD ON THE GO」をNetflixで観た

 

お料理番組が好きで、よく観る。日本のものだろうが、海外のものだろうが、構わない。わたし自身は料理が好きでも得意でもないが、いや、だからこそ他人が美味しいものを作る姿に惹かれるのかも知れない。

週末にNetflixで観た「FOOD ON THE GO」は、伝統的なイタリア料理と、北米移民/アルゼンチン移民のコミュニティにおけるイタリア料理の変質についてバランス良く描いた面白いドキュメンタリーだった。

例えばここで描かれるのは、「寿司→カリフォルニアロール*1」のような、食の輸入によるローカライゼーションとは少し違う。貧しさから祖国を離れたイタリア移民が、食糧事情の良い北米や、肉が豊富なアルゼンチンで、彼ら自身により料理を変質させていく。

「ミートボールスパゲッティなんて、イタリア人は食べない」「『ミラノナポリタン*2』なんて名称からして矛盾してる」と、伝統的イタリア食を守る立場の人たちは眉をひそめる。一方で、とあるフィレンツェの料理人は「そもそも梨はかつてペルシャと呼ばれていたし、ここの名物の『bistecca(イタリア語でステーキを意味する)』は英国軍人の食べていた『beef steak』からきたものだ」と、食の伝播と変容に対して寛容な態度を見せる。また、マンハッタンのピザショップやイタリア料理点で「本物のイタリア料理」など知らない中南米系移民が活躍する姿も興味深い。

思い出すことがある。

イカsquid」だと英語の授業で習っていたわたしは、英米の料理番組でイカの切り身を「calamari」と呼んでいるのを最初に観たとき、ひどく戸惑った。それからしばらく経って「calamari」というのがイタリア語でイカを意味する単語だということを知った。正確なところはわからないが、タコやイカといった海産物を食べる習慣のなかったアングロサクソンは、食材としてのイカをイタリア移民経由で認識するようになり、だからそれを「calamari」と呼ぶのだろうか。

番組の中で、誰かが「その国の住人がそれを『自分の国の料理』だと言うようになったときが、移民が本当にその国に馴染んだときだ」と言っていた。そして、事実、そこに出てきたアメリカ人やアルゼンチン人は、ピザは自分の国の料理だと断言するのだ。

*1:広義には、日本におけるカレーの国民食化や、イタリア料理のローカライズもここに含まれると思っている。

*2:本邦における「ナポリタンスパゲッティ」的なものを想像したが、実際はミラノ風カツレツにハムとチーズとトマトを載せた料理だった。